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DWARFING GENE

節間伸長と

その制御遺伝子

​ 節間伸長とは、細胞分裂または細胞伸長によって、節と節の間が伸びることです(図a)。草丈は節の数と節間伸長によって決まります。節間伸長が重要なのは、多肥な土壌でも草丈が伸びず、耐倒伏性が増すからです。特にイネでは、半矮性遺伝子sd1(ジベレリン生合成酵素の遺伝子)を利用したことで、緑の革命が達成されました。

 ソルガムの高バイオマス性の解析で見つかった節間伸長を制御する遺伝子の一つは、その染色体上の座乗位置から、ソルガムの節間伸長制御遺伝子Dw1の遺伝子座と考えられました。この劣性変異アレルdw1は1905年、アメリカのメンフィスで起きた自然突然変異を固定したもので、発見以来一世紀以上もの間、ソルガム育種に使われてきましたが、その遺伝子は同定されていませんでした。そこで私たちは、この遺伝子のクローニングを目指し、ついに成功しました。その結果明らかとなったことは、DW1は新規タンパク質で(Yamaguchi et al. 2016)、その機能はブラシノステロイドという植物ホルモンの信号伝達に対して正に働くということでした。具体的には信号伝達の主要抑制因子であるBIN2タンパク質に結合し、本来は核に局在するBIN2が、核へ局在できなくなることでその働きを阻害していると考えています(図b, Hirano et al. 2017)。このことは驚くべき事実でした。通常、イネ科作物(イネ、ムギなど)では、耐倒伏性育種のために、節間伸長遺伝子の変異が使われてきましたが、それは全てジベレリン関連遺伝子だったのです。なぜ、ソルガムではジベレリン関連遺伝子が使われなかったのか?それは意外にも、私たちの過去の研究に答えがありました。私たちは、イネなどで節間伸長の制御に使われているジベレリン生合成酵素について、過去に突然変異体を多数系統化し解析してきました。その結果、驚いたことに、なぜかそれら全ての機能欠失型変異体では稈(茎)が湾曲していたのです(図c, Ordonio et al. 2014)。この理由は未だ不明なのですが、このことはソルガム育種では、いみじくもジベレリン関連の変異が利用できないことを意味していました。これが理由で、ソルガムではブラシノステロイド関連の変異が利用されたのだと私たちは考えています。

この研究は、ソルガムだけでなく、それ以外のイネ科作物の実用育種においても、ブラシノステロイド信号伝達遺伝子の利用について、活路を切り開いたことになりました。

節間伸長遺伝子
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